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#050 *~からこそ/~ばこそ

050 *~からこそ/~ばこそ 名詞    : だ/である         +  からこそ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーだ/である> 名詞    : であれば/なら       +  こそ 動詞・形容詞:仮定形<ナ形ーであれば/なら> ♪ 会話 ♪ 良子:心配してると思えばこそ、こうして電話してるのに、いきなり怒鳴りつけることもないでしょ。 李 :一体全体、今何時だと思ってるんだ。帰りが遅すぎるから、何かあったのかと心配してたんだぞ。 良子:それにしても、もう少し優しく話してくれたっていいんじゃないの? ♯ 解説 ♭  「~からこそ/~ばこそ」は、どちらも「正に~だから~」と原因・理由を強調する表現です。副助詞「こそ」と結びついて、文末が「~んです」と呼応するのが特徴です。「~からこそ」と「~<仮定形>ばこそ」の多くは置き換え可能ですが、仮定形の「~ば」は文末に完了形(「た」形)がとれない制約があるため、例文4、5のような場合は不自然になります。  君が来いと ○言ったからこそ 僕は来たんだ。        ×言えばこそ § 例文 § 1.親は子を愛するからこそ、厳しくしかることもある。 2.健康だからこそ、幸せな日々が過ごせるのよ。 3.君のことを心配すればこそ、注意しているんです。 4.この作品は、妻の協力があったからこそ完成したのです。 5.私の話に耳を貸さなかったからこそ、失敗したんだ。こうなっては、もう取り返しがつかない。 ★ 例題 ★ 1) 苦し(さ/み)が多いほど、また喜びも大きい。そして、悲し(さ/み)が多いほど、人に優しくなれる。このように人生は、表裏一体だ(からこそ/からには)おもしろいんじゃないか。 2) 希望が(ある→    )ばこそ、人は(生きる→       )いけるんじゃないでしょう( )。 (^^)前課の解答(^^) 1) から言えば/ほど/は 2) から/が/か

#049 *~から言うと/*~から言えば/*~から言って

049 *~から言うと/*~から言えば/*~から言って 名詞: ×   +  から言うと            から言えば            から言って ♪ 会話 ♪ 李 :営業担当として言わせていただくと、新製品の開発はできるだけ急いでいただきたいです。 佐藤:今一歩のところまで来てはいるんですが、現状から言って、もう一ヶ月程度はみてください。 課長:他社に先を越されては困るし、かといって品質に問題があっても困る。とにかく、部長の指示を仰ごう。 ♯ 解説 ♭  「~から言うと/*~から言えば/*~から言って」は「~ の観点から判断して言えば ~」という意味で、用法の差はありませんが、仮定の「と/ば」がないため、「~から言って」は断定に近い語感になります。  同義表現に「~から見ると/~から見れば/~から見て/~から見たら」(→文型059)、「~からすると/~からすれば/~からして」(→文型052)がありますから、各項を参照してください。 § 例文 § 1.A社の製品は、デザインから言えばB社に勝るが、実用性から言えば劣っている。 2.彼の性格から言って、その程度のことでくよくよしたりしないでしょう。 3.健康という観点から言えば、激しい運動は「百害あって一利なし」です。 4.この成績から言うと、○○大学は少し無理かと思う。 5.交渉の進展状況から言って、今夜が山場になるだろう。 ★ 例題 ★ 1) 親の気持ち(から言えば/からと言って)、血を分けた自分の子供(ほど/しか)大切なもの(は/が)ない。 2) 気候( )( )言うと、北海道の方( )北京より寒いんじゃない( )と思える。 (^^)前課の解答(^^) 1) する/なんて(→文型274)/だい(→文型129) 2) に(→文型402)/覚え(~切る→文型067)/が(自V)

#048 ~からある/~からする/~からの

048 ~からある/~からする/~からの 数詞: ×  +  からある          からする          からの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 山田:例の他社から引き抜かれて来た彼、懸案だった○○物産を見事に開拓しちゃったよ。やはり凄腕だよ。 李 :「営業の鬼」と言われる人物だけあるねえ。今まで10人からの営業が当たっても無理だったのにねえ。 山田:その報賞として、社長から金一封と50万円からする時計をもらったそうだ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型の用法は「~を越える~」「~以上ある~」という意味を表します。話者とって数量がとても多いと感じられるとき使われる文型で、距離・重量・高さなどには「~からある」、金額には「~からする」、人数には「~からの人」が使われます。  例えば実際は二万円でも、その数量をどう感じるかで表現は異なります。   二万円ぽっちの時計 <その時計をとても安いと感じている>   二万円しかない時計 <その時計を安いと感じている>   二万円ばかりする時計<その時計を少し高いと感じている>   二万円からする時計 <その時計をとても高いと感じている> § 例文 § 1.彼は50キロからあるバーベルを軽々と持ち上げた。 2.この骨董品は明代の物で、買うとなると50万円からします。 3.この前の地震では、二万人からの人々が家を失い、五千人からの人が死にました。 4.この湖は、深いところは三百メートルからあります。 5.数名しか採用しない会社の社員募集に、五百人からの人が応募した。 ★ 例題 ★ 1) 二億円から(ある/する)絵画をぽんと買っていく(なんか/なんて)、一体どんな人なん(だい/かい)? 2) 日本人が中学まで( )習う教育漢字だけで881字からある。非漢字圏の学生たちから、とても(覚える→   )切れないという悲鳴( )聞こえてくる。 (^^)前課の解答(^^) 1) として(→文型237)/かもしれない/は 2) で/に(「へ」も可)/入れ(V〔ます〕形+なさい)

#047 *~かもしれない/~かもわからない

047 *~かもしれない/~かもわからない 名詞    :  ×       +  かもしれない 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×>   かもわからない ♪ 会話 ♪ 小平:難しいかもしれないけれど、私立の○○中学を受験してみようかと思うんだ。お母さん、いい? 良子:えっ?あの有名な○○中学? 小平:もしかしたら、合格の可能性もあるかもわからないと、先生が言ってくれたんだ。 良子:わかったわ。駄目でもともと、やってみたら? ♯ 解説 ♭  「~かもしれない」は初級文型ですが、「~かもわからない」の形もあって意味も用法も変わりません。関連表現を挙げれば、可能性が高いと思えば「~だろう」、ほぼ確実だと思えば「~はずだ」が使われます。   明日は雨が降るかもしれない。   明日は雨が降るだろう(60~80%)   明日は雨が降るはずだ(95~99%)  以上は知的推量に属しますが、人間の五感に基づいて感覚的に推量するときは「~ようだ/~そうだ/~らしい」(→資料「)が使われます。例えば、人の額に触って「熱があるようだ」とは言っても、「熱があるだろう」とは言えません。 § 例文 § 1.帰りが遅すぎる。娘の身に何かあったのかもしれない。 2.そう言えば、そんなことを言ったかもしれないなあ。 3.ずいぶん勝手な奴だとお思いになるかもしれませんが、先日の話は一旦白紙に戻していただけないでしょうか。 4.一時父は重体で、もう助からないかもしれないと思ったが、どうやら峠は越したようだ。 5.ひょっとしたら、行方不明の息子が帰ってくるかもしれないと思って、部屋はそのままにしてあるんです。 ★ 例題 ★ 1) 机上の理論(として/にとって)は成立する(はずだ/かもしれない)が、現実から(は/が)遊離した空論だ。 2) 旅先( )何があるかもわからないから、その際はここ( )電話を(入れる→     )なさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) まもなく/はず(→文型367)/入り次第(→文型111)/ただちに 2) と(内容の引用)/乗り(→文型094)/へ(~へと→文型387)

#046 ~が早いか

046 ~が早いか 動詞:原形  +  が早いか ♪ 会話 ♪ 李 :小平のしつけがなってないなあ。座るが早いか、「いただきます」も言わないで夕食に食らいついたぞ。 良子:あなたって家に帰ってくるが早いか私に小言ですか。あなたにも半分は責任があるのよ。 李 :坊主、雲行きが怪しいと思ったのか、食事が終わるが早いか逃げ出していったよ。 ♯ 解説 ♭  「~が早いか」は「~すると、すぐ~」を意味します。「~が早いか」は動作の同時発生を強調する点に特徴があり、以下のような自然現象や状態発生に使うと不自然になります。また、現実に起こった既定事実描写なので、後件で「~たい・~つもりだ・~だろう」などの意志・推量表現は使えません。→例題1)   家に帰るか帰らないうちに(?帰るが早いか)、雨が降りだした。   帰ったとたんに(×帰るが早いか)、涙が出てきた。  同義表現は多くありますから、「~か~ないかのうちに」( → 文型042 )の項を参照してください。 § 例文 § 1.ベルが鳴るが早いか、彼は教室を飛び出した。 2.彼女は卒業するが早いか、結婚してしまった。 3.バスが着くが早いか、乗客は先を競って乗り込んだ。 4.主人の足音を聞くが早いか、子犬は駆け寄ってきた。 5.店が開くが早いか、お客はバーゲン会場に殺到した。 ★ 例題 ★ 1) (まもなく/ただちに)取引先からの電話がある(はず/つもり)なので、(入ったとたんに/入り次第/入るが早いか)、(まもなく/ただちに)教えてください。 2) 隊員たちは「○○地区で火事が発生!」( )の連絡を受けるが早いか、消防車に(乗る→    )込み、現場( )と急いだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ただ(副詞の語義)/あたかも/ように 2) と(~ときたら→文型229)/知っている/で

#045 *~かのようだ

045 *~かのようだ 名詞    : ×  / である    +   かのようだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×> ♪ 会話 ♪ 祖父:自分の家での昔ながらの披露宴もいいもんじゃ。皆が集まると、昔に戻ったかのようじゃ。 祖母:でも裏方はもう大変。台所は盆と正月がいっしょに来たようでしたよ。 祖父:次男と末っ子にも、もう結婚相手が決まっとるかのようじゃったが、時が経つのは早いものじゃのう。 ♯ 解説 ♭  「~かのようだ」は「<実際はそうではないが>まるで~ようだ」(類似)を意味します。実際はそうではないことが暗示されているため、「~ふりをする」という意味や非難・軽蔑の感情を込めるときはこの文型がぴったりです。その際は「あたかも・さも」という副詞と結びつことが多いでしょう。例えば、「さも知っているような態度 」は「知っているふり」とほぼ同義です。なお、例文5のように「~ようだ」のかわりに古語「如し」(→文型083)が使われることもあります。 § 例文 § 1.寒いなあ。もう3月なのに、真冬に戻ったかのようだ。 2.新宿は不夜城の名にふさわしく、毎晩が祭りであるかのようににぎわっている。 3.彼女はペットの猫を、あたかも実の子であるかのように可愛がっている。 4.彼は毎日エネルギッシュで、疲れを知らないかのようだ。 5.この度の金融破綻が、全て政府・与党の無能無策から生じたかの如き主張は、我が党としては受け入れ難い。 ★ 例題 ★ 1) (ただ/ほん)の風邪なのに、(あたかも/実に)重病人であるかの(ように/ような)大げさに騒いでいる。 2) 彼( )きたら、さも何でも(知る→     )かのような口振り( )話す。  (^^)前課の解答(^^) 1) でも/ような(~ような+N)/兼ねる(~得ない→文型017) 2) と(「~としては」の謙譲の形→文型237)/に/応じ

#044 *~兼ねる

044 *~兼ねる 動詞:[ます]形  +  兼ねる ♪ 会話 ♪ 李 :今回の措置は少々理解し兼ねますので、よろしければ、説明していただけないでしょうか。 課長:色々と事情があってねえ。私の口からは説明し兼ねるから、佐藤君から聞いてくれよ。 佐藤:およその事情は存じておりますが、私には説明役は少し荷が重過ぎます。 ♯ 解説 ♭  「~兼ねる」は「心理的・感情的理由で~できない」を意味する表現です。「~できない」を意味する可能表現は下例のように色々ありますが、各項を参照してください。下例の中で「~得ない」は「~する可能性がない」を表すので、第三者のことでないと少し不自然ですが、意味の差は別にすれば、どれも使えます。→例題2)  お世話になった人の頼みだから、   断れない。   断り兼ねる。   断り得ない。     ( →文型017 )   断るわけにはいかない。(→文型457)   断り難い。  ( →文型034 ) § 例文 § 1.あなたの意見には、どうしても賛成し兼ねます。 2.その種のことは、同僚の僕の口からは言い兼ねるね。 3.今か今かと子どもの帰りを待ち兼ねて、何度も玄関口まで見に行った。 4.彼は能力はあるが、協調性がなく、私には扱い兼ねる存在だ。 5.当館では、傘の保管には責任を負い兼ねます。各自ビニール袋に入れてお持ちください。(張り紙から) ★ 例題 ★ 1) たとえあなたの頼み(なら/でも)、こんな歴史を歪曲する(ように/ような)本は推薦し(得ない/兼ねる)。 2) 当店( )いたしましては、申し訳ございませんが、その種のご相談( )は(応じる→    )兼ねます。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(動作の場所)/しない(→文型203)/起こし(他V) 2) から/なけれ/繰り返し

#043 *~兼ねない

043 *~兼ねない 動詞:[ます]形  +  兼ねない ♪ 会話 ♪ 課長:李君もずいぶんと危ない賭けをやったものだ。うまくいったからいいようなものの、一歩間違ったら取り引き停止になり兼ねなかったぞ。 係長:私が商いの「いろは」から教え直します。 山田:しかし、話し方に注意しないと、誇り高い彼のことですから、辞めるなんて言い出し兼ねませんよ。 ♯ 解説 ♭  「~兼ねない」は不確実な推量を表す「~かもしれない」系の表現で、「(良くない事態が発生する)可能性がある」という意味を表します。「~する恐れがある」( →文型020 )とほぼ同義の推量表現です。この二つは常に悪い事態にしか使えませんが、「~かもしれない」と同じく、事態の良し悪しに関係なく使える表現に「~ないとも限らない」(→文型264)があります。   秘密が漏れるかも知れない。   秘密が漏れ兼ねない。   秘密が漏れる恐れがある。   秘密が漏れないとも限らない。 § 例文 § 1.会社命令に背こうものなら、首にされ兼ねない。 2.あいつは金のためには人殺しだってやり兼ねない男だ。 3.そんなにスピードを出したら、交通事故を起こし兼ねない。 4.部下を無能呼ばわりするなんて、人を傷つけるひどい言い方だけど、あの部長なら言い兼ねないね。 5.このままでは両国の国境紛争は、全面戦争に発展し兼ねない。まさに一触即発の状態と言えるだろう。 ★ 例題 ★ 1) 旅先(に/で)は飲み水に注意しなさい。そう(する/しない)と、食あたりを(起こり/起こし)兼ねない。 2) 過ち( )( )学ぶことが(ない→   )ば、再び同じ過ちを(繰り返す→    ) 兼ねない。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(「明ける」は自V)/明けない/を始めた(自Vか、他Vか) 2) 書き/終えない/が(~がする →文型031 )

#042 *~か~ない(かの)うちに/~か~ないかに

042 *~か~ない(かの)うちに/~か~ないかに 動詞:原形  +  か、動詞:ない形  +  かのうちに                         うちに                         かに ♪ 会話 ♪ 小平:あれ、まだ八時か。夕御飯から一時間たつかたたないかなのに、なんだかお腹が空いたなあ。 良子:今、食器を洗い終わったばかりなのに・・・。 小平:口に入る物なら何でもいいから、何かないの? 良子:あ~あ、片づくか片づかないうちに、またそんなことを言われてもねえ。これじゃ気が休まる暇もないわ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「~すると、すぐ~した」(連続発生)という意味を表します。既定事実なので、習慣を述べる場合以外は文末は完了形(「た」形)になります。同時発生を表す文型は多くあり、「~が早いか」(→文型046)、「~なり」(→文型280)、「~とたんに」(→文型 148)や「~そばから」(→文型 127)、「~や否や」(→文型428)などですが、各項を参照してください。  注意してほしいのは、上記の文型はどれも「~と、すぐ~」のグループで、後件で「~たい・~つもりだ・~だろう」などの意志・推量表現は使えません。これは条件を表す「と」と「たら」の違い(→資料・)から発生したものです。○ 帰ったら、すぐうがいをしなさい。× 帰ると、すぐうがいをしなさい。 § 例文 § 1.ホームに着くか着かないかに、発車のベルが鳴り出した。 2.彼女は、会社から送られてきた不採用の通知を読むか読まないうちに、わっと泣き出した。 3.彼はベットに横になるかならないうちに眠ってしまった。 4.黒い雲が現れるか現れないうちに、激しい突風が吹き荒れ、その妖怪は姿を現した。 5.この店のパンは、店頭に並ぶか並ばないかのうちに、飛ぶように売れていく。 ★ 例題 ★ 1) 夜(が/を)明けるか(明ける/明けない)うちに、母は台所に立って朝御飯の支度(が始まった/を始めた)。 2) 解答を(書く→    )終えるか(終える→    )かのうちに、試験官の「そこまで」という声( ) した。 (^^)前課の解答(^^) 1) ったら(「~と言ったら」の口語→文型219)/まで/もう 2) 怒り(→文型137)/か/立

#041 *~かと思うと/*~かと思いきや/~かと見ると

041 *~かと思うと/*~かと思いきや/~かと見ると 名詞    :    ×     + かと思うと/かと思えば 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×>  かと思ったら                    かと思いきや                    かと見ると/かと見れば (注:「~(の)かと思うと」のように「の」が入ることもある) ♪ 会話 ♪ 真理:さっきのお客さん、入ってきたかと思ったら、いきなり大声で文句を言い始めたんだから。 李 :ゆゆしき一大事かと思いきや、結局はどういうこともなかったね。よかった、よかった。 百恵:そうかと思うと昨日みたいに、言葉少なでも迫力があって恐いお客さんもいるわね。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「~(だろう)かと思ったら、意外にも~した/だった」という予想外の事態の発生を表します。どれも既定事実の表現なので、文末は完了形(「た」形)になります。「~かと見ると・~かと見れば」は視覚判断が強調されていますが、「~かと思うと・~かと思えば」と基本的な意味は同じです。なお、「~かと思いきや」は「~かと思うと」の文語的表現です。  「か」のない「~と思うと/と思ったら/と思いきや」の形も使われますが、そのときの接続は次の通りです。  名詞 :   だ      と思うと  動詞 :  普通形     + と思ったら  形容詞:普通形<ナ形ーだ>   と思いきや § 例文 § 1.静かなので勉強してるのかと思うと、ぐうぐう寝ていた。 2.右かと見れば左から、左かと見れば右から、そのボクサーは多彩なパンチを繰り出した。 3.怒るのかと思いきや、なんと笑い出したではないか。 4.もう出かけたかと思ったら、まだ家でぐずぐずしていたのか。急がないと遅れるぞ。 5.一つ解決したかと思うと、また一つと、次から次に問題が出てくる。 ★ 例題 ★ 1) この子(って/ったら)、さっき(まで/までに)泣いてたかと思ったら、(もう/まだ)笑ってるわ。 2) 彼は(怒る→    )出した( )と思いきや、突然(立つ→    )上がり、私に握手を求めてきた。 (^^)前課の解答(^^) 1) か否か/のみ/みなくちゃ(口語:~ちゃ=ては/~たって=ても) 2) か/か/ある(~まい→文型

#040 *~かどうか/~か否か

040 *~かどうか/~か否か 名詞    :    ×     + か否か 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>   かどうか                    かどうかにかかっている                    か否かにかかっている ♪ 会話 ♪ 良子:その人が成功するか否かは、何によって決まるのかしら。あなた、どう思う? 李 :才能があるかどうかじゃないのかなあ。いくら努力しても駄目な人もいるしね。それに運もあるなあ。 良子:でも、「玉磨かざれば光なし」って言うし、努力なくして成功はあり得ないと思うわ。 ♯ 解説 ♭  「~か否か」は文語表現で、口語の「~かどうか」と同義です。また例文5のように「(~かどうか/~か否か/~如何)にかかっている」の形もよく使われますが、この「~にかかっている」は「~によって決まる」を意味します。  合格するかどうか(・か否か)は、努力するか(・か否か)にかかっている。 § 例文 § 1.それが事実かどうか、調査する必要がある。 2.賛成か否か、自分の意見をはっきり言いなさい。どっちつかずは卑怯です。 3.原発を存続させるか否かをめぐって、国論は真っ二つに割れている。 4.やるか否かは、状況如何にかかっている。 5.この製品が売れるかどうかは、宣伝が充分かどうかにかかっている。 ★ 例題 ★ 1) 勝てる(や否や/か否か)は天(のみ/しか)ぞ知るだよ。やってみなく(たって/ちゃ)わからないさ。 2) おいしい( )どう( )は食べてみればわかる。実践  こそ真理に近づく道では(ある→   )まいか。 (^^)前課の解答(^^) 1) が/と言えば/しよう(→文型441) 2) か/と/言えない(陳述副詞:一概に~とは言えない)

#039 ~かと言うと/~かと言えば

039 ~かと言うと/~かと言えば なぜ  ~ 名詞    :    ×     + かと言うと どう    動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×>   かと言えば どうして どちら ♪ 会話 ♪ 李 :ねえ、どちらの服が似合う? 良子:どちらかと言えば、右手に持っている明るい色の方がいいと思うわ。若々しくていいんじゃない? 李 :少し派手じゃないか? 良子:そんなことないわよ。日本のサラリーマンは黒っぽいのとか、灰色っぽいのとか、とにかく地味すぎるのよ。 ♯ 解説 ♭  「~かと言うと/~かと言えば」は疑問詞と呼応して、「~のことに関して語れば」という意味を表します。多くは「なぜ~かと言うと~からだ/どうして~かと言えば~からだ」のように理由を述べることが多いのですが、「どう/どちら/どんな…」などとも一緒に使うことができます。  なお、「なぜかと言うと/どうしてかと言うと」などの接続詞もここから生まれています。例文5のように、希に疑問詞を含まない用例もありますが、相手方にとって意外なこと、想像もしなかったことを表すことが多いでしょう。 § 例文 § 1.どちらが好きかと言えば、やはり僕はこちらの方ですね。 2.誰が適任かと言えば、やはり山田君以外にいないだろう。 3.日本語の学習にはどんな方法が一番いいかと言うと、とにかく丸ごと暗記することでしょうね。 4.成功の秘訣ですか?どうすれば夢を実現できるかと言うと、そうですねえ、夢を持ち続けることでしょうね。 5.親が教師だから、その息子も勉強ができるかと言えば、  そうとばかりは言えないようです。 ★ 例題 ★ 1) なぜ僕(は/が)怒っているかと(言えば/言って)、君が自分の失敗を人のせいに(する/しよう)とするからだ。 2) お金があるから幸せ( )と言う( )、一概にそうとは(言える→ )わけです。 (^^)前課の解答(^^) 1) こと(~とのことだ→文型209)/がてら/みよう(勧誘・提案) 2) 散歩し/寄って(=~て、それから)/買って(→文型181)

#038 ~がてら

038 ~がてら 名詞: ×     +    がてら 動詞:[ます]形 ♪ 会話 ♪ 李  :夕涼みがてら、井の頭公園でも散歩しないか。 良子:男の人って優雅でいいわねえ。女の私はどこへ行くにも買い物がてらよ。 李 :わかった、わかった。ついでに吉祥寺の街に出て、夕食の材料も買って来よう。荷物は僕が持つからさ。 良子:ねえ、夏物の服も買っていいかしら? ♯ 解説 ♭  「~がてら」は「Aをしている時間を使って、Bをする」と言う意味を表す表現で、同一時間帯のなかで、主たる動作Aに並行して、従たる動作Bをすることを表現します。  また、同義表現の「~かたがた」( →文型035 )、「~ついでに」(→文型163)も併せて参照してください。なお、このふたつの文型は同時並行動作は表せません。  散歩がてら(・かたがた/・ のついでに)本屋に寄る。  散歩がてら(・かたがた/×のついでに)話をしよう。 § 例文 § 1.神社のお祭りを見物がてら、夜店でものぞいてこようよ。 2.中国旅行がてら、教え子に会って来ようかと思う。 3.私は毎朝この道をジョギングがてら、思い浮かんだことを俳句にしている。 4.市場調査がてら都内の繁華街を冷やかして歩くのが、まあ、私の道楽のようなものです。 5.料理を作りがてら、聞くともなく聞いていたラジオから、  懐かしい歌が流れてきた。 ★ 例題 ★ 1) A君は病気療養中との(こと/もの)だから、見舞い(ながら/がてら)、家に寄って(みる/みよう)よ。 2) (散歩する→      )がてら、古本屋に(寄る→       )、本を数冊(買う→    )来た。 (^^)前課の解答(^^) 1) は/とかく(傾向)/走り/もの(~ものではない→文型420) 2) がち/で/と(内容・発言を取り上げる「と})

#037 *~がちだ

037 *~がちだ 名詞: ×     +   がちだ 動詞:[ます]形       がちなことだ               がちの  +  名詞 ♪ 会話 ♪ 課長:君、この頃元気がないね。いつもの君らしくないので、部長と心配しているのだよ。 李 :子供がよく熱を出すので、どこか悪いのではないかと心配で。医者は何でもないと言っているのですが。 課長:子育てに慣れないうちは、親もあれこれ悩みがちだが、小さな子にはありがちなことだよ。 ♯ 解説 ♭  「~がちだ」は「~する傾向がある」「よく<回数>~する」という意味を表す表現で、述べられることは良くない傾向です。例えば、下の例のように良い傾向には「よく~する」を使ってください。○ あの人は、よく公園をジョギングしている。× あの人は、公園をジョギングしがちだ。  ほぼ同義語に性向を表す「~嫌いがある」(→文型063)がありますが、この表現は回数が多いことや一時的現象には使えません。 § 例文 § 1.この種の間違いは、初心者にありがちなことだ。 2.この子は小さい頃から病気がちで、しょっちゅう医者通いをしていました。 3.明日は午後から、曇りがちの天気になるでしょう。 4.疲れているときは、不注意による事故が起こりがちだ。 5.ふと浮かんだアイディアというのは忘れがちだから、必ずメモに残すことにしている。 ★ 例題 ★ 1) 若いうち(は/に)、正義心から、(とかく/とにかく)極端に(走る/走り)がちだが、理想論だけで世の中は変わる(こと/もの)じゃないんだよ。 2) その人は遠慮( )( )に、 「あのう、ここ( )タバコを吸ってもいいですか」( )私に聞いた。 (^^)前課の解答(^^) 1) ぐらい(最低限→文型072)/聞きながら/もの(→文型130) 2) 多く(「多く」はN)/に/ため(目的の「ため}→文型152)

#036 ~かたわら

036 ~かたわら 名詞: の   +   かたわら 動詞:原形 ♪ 会話 ♪ 課長:新聞でも紹介されていたけど、田中さんは仕事のかたわら、自治会の会長としても地域で大活躍だね。 李  :奥さんも、中国帰国者に日本語を教えているボランティアグループのリーダーらしいです。 課長:有能な男のかたわらに良妻ありというところだな。君も地域活動で中国語を活かしてみたら? ♯ 解説 ♭  「AかたわらB」は「Aする一方でBする」とほぼ同義表現ですが、動作Aと動作Bは異なる時間帯で行われ、しかも習慣的な行為に用いることが多いでしょう。この点がAとBが同一時間帯で行われる並行動作を表す「~ながら」(→文型269)と異なっています。→例題1)   歩きながら(×かたわら)タバコを吸う。  その他、「かたわら」には会話中の「男の傍(かたわ)ら」や「母が料理を作るかたわらで、子供たちが遊んでいる」のように「側」という場所も表します。 § 例文 § 1.彼は会社に勤めるかたわら、英語学校で勉強している。 2.A社は不動産業のかたわら、飲食店も経営している。 3.あの人は農業のかたわら、農閑期は演奏活動もしているシンガー・ソング・ライターよ。 4.あいつは嫌な奴だ。本人の前では胡麻をするかたわら、裏で陰口をたたいている。 5.子育てのかたわら書きつづった随筆が、ベストセラーになった。 ★ 例題 ★ 1) 休日(ぐらい/ほど)は、音楽でも(聴きながら/聴くかたわら)、のんびり過ごしたい(こと/もの)だ。 2) 留学生の(多い→   )は大学( )通うかたわら、学費を稼ぐ( )( )にアルバイトもしている。 (^^)前課の解答(^^) 1) ご/かたがた(~ついでに→文型163)/お/したい/ております 2) ×/遊び(「ます形+に行く」)/行って(→文型197)

#035 ~かたがた

035 ~かたがた 名詞: ×  +  かたがた ♪ 会話 ♪ 山田:打ち合わせを早めに切り上げて、工場見学かたがたお花見に行かないか。夕日を浴びながらのお花見。たまにはのんびりしようじゃないか。 佐藤:おやおや、お花見かたがたの工場見学と言った方が正確じゃないの?困った方々だなあ。 山田:行きたいなら、がたがた言わないこと! ♯ 解説 ♭  「~かたがた」は「AかたがたB」の形をとり、同一主語文で使われ、同一時間帯のなかで「Aをする機会を使って、Bをする」並行動作を表します。丁寧な語感なので、手紙や公式の会話で多く使われます。同義表現に「~がてら」( →文型038 )があり、こちらは日常会話で 多く使われます。どちらも動作Aが主で動作Bが従の関係にあります。    散歩かたがた(・がてら)、話しましょう。  「AついでにB」(→文型163)も似た意味を表しますが、Bは付け足しの行為で異なる時間帯の動作です。→例題1) § 例文 § 1.夕涼みかたがた、図書館に寄ってみた。 2.墓参りかたがた、幼友だちに会って来ようと思う。 3.お願いかたがた、近況御報告まで。 敬具 4.近くに来るついでがございましたので、先日のお礼かたがた、お伺いしました。 5.上海出張かたがた、足を伸ばして黄山に登ってきた。 ★ 例題 ★ 1) 近日中に(お/ご)挨拶(のついでに/かたがた)、(お  /ご)伺い(になりたい/したい)と思っ(ております/ていらっしゃいます)。 2) お寺参り( )かたがた、浅草へ(遊ぶ→    )に(行く→     )みませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(自V)/すれば/難く(不可能の意味の方が自然) 2) 美しさ(Nの形)/に/尽くし(「筆舌に尽くしがたい」は慣用語)

#034 *~難い

034 *~難い 動詞:[ます]形  + 難い ♪ 会話 ♪ 佐藤:初代の中国事務所の所長を、課長から打診されたんだけど、日本は住みやすいので離れたくないよ。 李 :離れ難いのは日本ではなくて、真理さんなのと違うかい?でも、どこでも「住めば都」だよ。 佐藤:所長だなんて急に言われても、にわかには受け難いよ。気持ちの準備もできていないしさ。 ♯ 解説 ♭  「~難い」は「~するのが困難だ」と意味ですが、人間の心理・思考面を表していて、実際は「しようとしても~できない」不可能な事態を表します。この点が類義表現「~にくい」(→文型306)との大きな違いで、「~にくい」は「難しいが、しようと思えば~できる」事態を表しています。→例題1)   その要求は受け入れ難い。 ≒ 受け入れられない   その要求は受け入れにくい。≒ 受け入れられないことはない § 例文 § 1.信じ難いことだが、彼は会社の金を使い込んでいたそうだ。 2.彼は得難い人材だ。会社の将来は彼のような若者の肩にかかっている。 3.耐え難きを耐えてこそ、忍耐と言える。 4.これはちょっと言葉では表し難い珍味ですなあ。 5.君の企画案は単なる思いつきに過ぎず、具体的なプランもない。これでは採用し難いね。 ★ 例題 ★ 1) もしこの交渉(が/を)決裂(すれば/しても)、両国の全面的な軍事衝突は、もはや避け(難く/にくく)なる。 2) 香港の夜景の(美しい→    )は、正に筆舌( )(尽くす→    ) 難いものだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) において(→文型291)/または/ないと(理由か条件か) 2) か/か/もらえ(可能形を使った依頼)

#033 *~か、それとも~か/*~か、或いは~か/~か、または~か

033 *~か、それとも~か/*~か、或いは~か/~か、または~か 名詞    :    ×     +  か、それとも~か 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>    か、或いは                     か、または ♪ 会話 ♪ 良子:小平も一人部屋をほしがってるし、広い所に引っ越すか、それとも思い切ってマンションを買うか、決めなくてはいけないわね。 李 :今の給料じゃ、どちらも無理だよ。 良子:あ~あ、甲斐性のない夫を持つと、妻が苦労するわねえ。いっそ、夫を取り換えようかしら? ♯ 解説 ♭  これらの文型は例文1~3のように疑問句AとBを対比させ、どちらか一方の選択を求める場合に用います。この場合、「Aか、それともB」「Aか、或いはBか」「Aか、またはBか」は同じように使えます。  しかし、「それとも」は二者択一の時にしか使えません。なお、「或いは」「または」には例文4、5のようにそれ以外の用法があり、その場合には「それとも」が使えません。それ以外に次のような違いがあります。→例題1)  <AもBも、どちらも>   英語も、或いは(×それとも/×または)中国語も通じない。  <AでもBでも、どちらでもいい>   円或いは(×それとも/○または)ドルで支払ってください。 § 例文 § 1.バスで帰ろうか、それとも歩いて帰ろうか? 2.中華料理にするの、それとも和食にするの。 3.突撃して活路を開くのか、或いは降伏して命ごいをするのか、もはや道は二つに一つだ。 4.泣いて詫びようが、或いは(×または/×それとも)いくら慰謝料を払おうが、君の犯した罪は消えない。 5.この署名欄には、日本語か、または(⇔或いは/×それとも)英語で御記入ください。 ★ 例題 ★ 1) 海外ビジネス(において/について)は、現地語(または/それとも)英語ができ(なくて/ないと)困る。 2) 参加するの( )、それともしないの( )、この場ではっきり返事をして(もらう→     )ませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) 辺り(「N+」に注意)/ことになり(様態の「そうだ」)/つもり 2) で/で/いただけ(可能形を使うと依頼)

#032 ~かそこら/~辺り/~足らず/~余り

032 ~かそこら/~辺り/~足らず/~余り 数詞: ×  +  かそこら  ① 名詞: ×  +  辺り    ② 数詞: ×  +  足らず   ③ 数詞: ×  +  余り    ④ ♪ 会話 ♪ 良子:あ~あ、寒い。今朝なんか五度かそこらだったのじゃないかしら。マフラーを買わなきゃ。 李 :この辺りにはセンスのいい店がないね。アメ横辺りで買えば一万円でお釣りが来るだろう。行ってみる? 良子:買ってもらえるなら、どこでもいいわよ。いつものあそこで、5時半に待ち合わせましょうよ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~かそこら」は「~くらい」(→文型071)と同義ですが、その数量を軽視する話者の受け止め方があります。ですから、「この家は五千万円かそこらで買えるよ」と言えば、その人にとって五千万円は大金ではありません。  ここで概数を表す表現<数量詞+くらい・かそこら・ほど・ばかり・足らず・余り>を整理しておきましょう。   十日±α  = 十日かそこら   十日≧α  = 十日足らず   十日≦α  = 十日余り  「~辺り」は名詞(時/ところ/人/こ・そ・あ)について大体の見当・推測を表すのですが、「付近・周囲」という意味の「辺り」から派生しています。 § 例文 § 1.東京から京都まで、あっという間だよ。新幹線で三時間かそこらで着くんだから。 2.あなたにとっては十万円かそこらは小遣い銭でも、私にとっては大金よ。 3.駅まではあっても二キロ足らずだよ。歩いて行こうよ。 4.この仕事には田中君辺りが、適任ではないでしょうか。 5.確か、ここら辺りに置いたはずなんだが、ないなあ。 ★ 例題 ★ 1) 来年(かそこら/辺り)、大阪支店に転勤という(ことになる/ことになり)そうだから、その(つもり/はず)でいてくれ。 2) 10分余り( )仕事も片づくから、ちょっとここ( )待っていて(いただく→    )ないかしら? (^^)前課の解答(^^) 1) した/から(文末が意志表現)/ましょう(勧誘・提案) 2) を(他V)/と(~とは②→文型242)/しない

#031 *~がする

031 *~がする 五感・感覚を表す名詞 : ×  +  がする                    がしない ♪ 会話 ♪ 李 :あれっ、どうしたの?なんだか顔色が悪いような気がするなあ。 百恵:ええ、夕べから少し寒気がするの。 李 :どれどれ、あれっ、すごい熱だ。早退して医者に行った方がいいよ。仕事も大切だけど、体を壊しちゃ元も子もないよ。 ♯ 解説 ♭  「~がする」は「~を感じる」を意味しますが、前につく名詞は「味・臭い・声・音・~感じ・気・寒気・光…」など、五感で直接感じる対象です。  「不安・怒り・喜び・危険」など抽象的・心理的対象は「不安を感じる」のように「~を感じる」を使います。この表現は「~を覚(おぼ)える」を使っても表せますが、少し古い言い方になります。→例題1) § 例文 § 1.隣は今留守のはずなのに、人の声がしました。 2.誰でも褒められたら悪い気はしないものだ。 3.私の家は道路の側にあるので、真夜中まで車の音がして、慣れないうちは眠れなかった。 4.なんだか変な味がするよ。これ腐ってるんじゃないか。 5.第六感というか、嫌なことが起こりそうな感じがする。 ★ 例題 ★ 1) あっ、稲光が(感じた/した)わ。夕立になるかもしれない(から/ので)、ねえ、あなた、早く帰り(ます/ましょう)よ。 2) 同じ過ち( )何度も繰り返す( )は、あきれ果てて、怒る気も(する→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 起ころう/ものなら(「万一~」は仮定文型)/恐れ(→ 文型020 ) 2) 落後した/はい(→ 文型003 )/の(→文型354)

#030 ~が最後/~たら最後

030 ~が最後/~たら最後 これ・それ・あれ:   ×     +  が最後 動詞      :た形(希に原形) 動詞      :た形       +  ら最後 ♪ 会話 ♪ 佐藤:アメリカに2、3年行かないかって言われて、迷ってるんだ。行ったが最後、しばらく帰してもらえない気がしてね。 真理:出世コースじゃないの。このチャンスを逃したら最後、二度と回って来ないわよ。 佐藤:君も一緒に行ってくれないか?どう? ♯ 解説 ♭  「~が最後/~たら最後」は「~が最後で、もう終わりだ」など、絶望的な結果になることを表します。文末で可能形の否定(「~できない/~(ら)れない」)が多く現れます。  類義文型に後件で悪い結果が発生することを強調する仮定表現「~(よ)うものなら」(→文型448)がありますが、「~が最後/~たら最後」は確定事実であることが強調されていて、「もし/もしも/万一」といっしょに使えません。しかし、「もし~(よ)うものなら」は成立します。→例題1)  そんなことを  言ったが最後、  この国では刑務所行きだ。          言ったら最後、          言おうものなら、 § 例文 § 1.あの男はこの業界の顔役で、彼ににらまれたら最後だ。 2.今度の仕事は少しでもミスをしたが最後、取り返しがつかないことになる。 3.彼は言い出したら最後、一歩も後へ引かない。 4.あいつはマイクを握ったが最後、離そうとしないカラオケ狂だ。 5.あんな女につかまったら最後、骨の髄までしゃぶられてしまうぞ。 ★ 例題 ★ 1) 万一大地震でも(起ころう/起こった)(が最後/ものなら)、この地域は地盤沈没の(嫌い/恐れ)がある。 2) 一旦(落後する→     )が最後、なかなか(はう→    )上がれない( )がこの競争社会だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 腐り/かけて/みたいだ(→文型408) 2) まとまり/で(理由)/壊れ(→文型441)

#029 *~かけだ/*~かける/*~かけの

029 *~かけだ/*~かける/*~かけの 動詞:[ます]形  +  かける              かけの + 名詞              かけだ ♪ 会話 ♪ 李 :おい、おい、言いかけた話を途中でやめるなよ。気になるじゃないか。 良子:きっとあなたは怒るから、やはりやめとくわ。 李 :よけい気になるよ。もったいぶらないで言いなよ。絶対怒らないからさ。 良子:実は、10万円のダイヤの指輪を買っちゃったの。 ♯ 解説 ♭  「~かけだ/~かけ」 は継続動詞<多くは他動詞>につくと「~している途中」や「~し始める」など開始や途中の状態を表し、瞬間動詞<多くは自動詞>につくと「~しそうになる」<直前状態>を表す表現になります。  今、書きかけたところだ。 <他動詞:開始>  書きかけの原稿があった。 <他動詞:途中>  危うく死にかけた。    <自動詞:直前>  この他に、「~に話しかける・~に呼びかける・~に立てかける…」などのように「(対象)に~する」という意味もありますが、少数の動詞にしかつきませんから、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.やりかけたことは、最後までやり通せ。 2.私が海で危うく溺れかけたところを、助けてくれたのが今の夫なんです。 3.もう日も沈みかけている。道を急ごう。 4.僕がうとうとしかけると、突然電話のベルが鳴った。 5.友達が遊びに来ると、息子は昼御飯も食べかけのまま飛び出していった。 ★ 例題 ★ 1) 臭いを嗅いで御覧よ。この肉はちょっと(腐る/腐り)(抜いて/かけて)いる(らしい/みたいだ)よ。 2) せっかく(まとまる→     )かけた話が、君の不用意な一言( )(壊れる→   )ようとしている。 (^^)前課の解答(^^) 1) 限りでは/よう(→文型435)/もの(→文型419) 2) に(慣用:~に目を通す)/では/なかった(→文型095)

#028 *~限りでは

028 *~限りでは 動詞: 普通形  +  限りでは ♪ 会話 ♪ 李 :それって、今はやりのヨーヨーかい。面白そうだね、ちょっとやらせて。 小平:いいよ。でも、これってこつがあって、案外、難しいんだよ。 李 :やってるのを見た限りでは、それほど難しくなさそうだけれど・・・。あれっ?できないや! ♯ 解説 ♭  「~限りでは」は「~範囲に限って言えば~」という意味で、後件で意見・判断や感想を表します。この文型が伝聞や判断の根拠の場合は、「~ところでは/~ところによると」(→文型233)を使って表すことができます。  私が見た 限りでは  それは本物のようです。       ところでは  なお、「<この/その>限りではない」という否定の形は、「(前の文の内容の)範囲に限定されない」という意味を表します。 § 例文 § 1.私が診た限りでは、ただの風邪のようです。 2.私の知っている限りでは、彼女はまだ独身のはずです。 3.私が理解した限りでは、そもそもボタンの掛け違いから生じた問題ですね。 4.この度の殺人事件に関し、私の捜査した限りでは、Aがきわめて黒に近いですね。 5.この病院の受け付けは午前中ですが、急患の場合はこの限りではありません。 ★ 例題 ★ 1) 私が聞いた(限っては/限りでは)、中国の都市部の変わり(方/よう)はすさまじい(こと/もの)がある。 2) その記事( )ざっと目を通した限り( )( )、これといって目新しい内容は(あった→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 限り/つもり(→文型175)/いつしか/ていった(→文型177) 2) 嫁いで(~てからというもの→文型180)/が(自V)/ように

#027 *~限りだ

027 *~限りだ 数詞・名詞:     ×      +  限りだ  ①                      限りで 感情形容詞:連体形<ーい/ーな>  +  限りだ  ② ♪ 会話 ♪ 李 :田中教授の家は箱根に別荘があって、夏休みは家族そろって、そこで過ごすんだって。 良子:羨ましい限りだわ。お金って、ある所にはあるものね。「金は天下の回りもの」って言うけれど・・・。 李 :僕たちの所には回ってこないね。あ~あ、夏の休暇も今週限りだけど、どこにも行けそうにないなあ。 ♯ 解説 ♭  「~限りだ」は日時について「~までだ」<期限>、数量について「~だけだ」<限定>を表します。「限り」は名詞なので、「限りで~/限りの<名詞>」の形も使われます。  また、「~限りだ」は感情形容詞につくと、「非常に~だ」という程度表現になります。多くの類義表現がありますが、代表的なものを挙げると、名詞に直接接続する「~極まる/~の極みだ/~極まりない」(→文型069)や、「~と言ったらない/(→文型219)」、「~のなんのって」(→文型358)や「~てたまらない/~てしかたがない」(→文型183)などです。   苦しい限りだ。   苦しいのなんのって。   苦しいと言ったらなかった。   苦しくてたまらない。 § 例文 § 1.この資料の貸し出しは、三日間限りです。 2.今日限りで、皆さんともお別れです。色々お世話になりました。 3.君と10年ぶりに再会できて、うれしい限りだ。 4.あんな奴に負けたなんて、くやしい限りだ。 5.根も葉もない噂をたてられ、腹立たしい限りだ。 ★ 例題 ★ 1) 一夜(限り/限って)の恋の(つもり/わけ)だったが、(いつしか/いつか)僕たちは深い仲へと発展し(ていった/てきた)。 2) 娘が(嫁ぐ→    )からというもの、わが家はまるで火( )消えた(ようだ→    )静まり返り、寂  しい限りです。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(自V)/変わらない/が(他Vの受身文) 2) で/ない/行う(~つもりだ→文型175)

#026 *~限り(は)/*~ない限り(は)

026 *~限り(は)/*~ない限り(は) 名詞    :である /でない   +  限り(は) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 李 :部長からこの企画を任された限りは、なんとしても成功させたくてね。それで、君の力を借りたいんだけど。 真理:私にできることなら、何でもするわよ。 李 :今度の新商品は主婦層を対象にしたものなので、女性の視点から発想しない限り無理だと思ってね。 真理:一口に主婦層といっても、ニーズも多様化してるわ。 ♯ 解説 ♭  「~限り」は仮定と既定(理由)の接続助詞の働きをします。仮定の時は「~する間は絶対~」、既定の時は「~からには」(→文型056)や「~以上」(→文型009)と同様に「~だから、必ず~」を表す理由の表現になります。  学生である からには 勉強しろ。        以上        限り  「~ない限り」は、例文4、5のように「(~する/~しない)間は、絶対~/~しなければ、絶対~」を意味するようになりますが、これは「~なければ」の強調表現と考えていいでしょう。 § 例文 § 1.生きている限り、先生から受けた御恩を忘れることはありません。 2.戦争が続く限り、人類の悲劇は終わらないだろう。 3.土下座でもして謝らない限り、決して彼を許さない。 4.相手方が非を認め賠償金を支払わない限り、我々は告訴することも辞さない。 5.彼は頑固だから、よほどのことがない限り、自分の説を変えることはないだろう。 ★ 例題 ★ 1) 使い捨ての消費文化(が/を)(変わる/変わらない)限り、ゴミ問題(を/が)根本的に解決されることはない。 2) 雨天( )(ある→    )限り、運動会は予定通り(行う→     )つもりです。 (^^)前課の解答(^^) 1) だから/だけ (→文型131)/ていく(~ていく→文型177) 2) 信じられない/で(手段)/が(「と」も可→文型154)

#025 ~がいい/~がよい

025 ~がいい/~がよい 動詞:原形/ない形  +  がいい               がよい ♪ 会話 ♪ 部長:今回の企画は一切を君に任せる。何かあっても責任は私がとるから、思う存分に腕を振るうがいい。 李 :任せていただき、ありがとうございます。部長の御期待にそえるよう、全力を尽くします。 部長:成功するかどうかは、君の肩にかかっている。では早速、取りかかりたまえ。 ♯ 解説 ♭  「~がいい/~がよい」は「~方がいい」と同じ提案・勧告の表現です。「~ばいい」や「~といい/~たらいい」(→文型154)も同じような意味を表しますし、「~するのが最善である/一番いい」と言う意味の文型「~に越したことはない」(→文型309)も類義表現です。  その中で「~がいい」だけは少し特殊で、語調によっては例文5や「死にたければ、勝手に死ぬがいい」のように「勝手にしろ」という放任を表したり、話者自身のことには使えないなどの制約があります。 § 例文 § 1.言いたい奴には、好きなように言わせておくがいい。 2.身の程知らずの愚かな夢からは、早く覚めるがよい。 3.彼がそんなにほしがっているなら、やるがいい。 4.殺したければ殺すがよい。俺を殺しても歴史の歯車を止めることはできない。 5.そんな奥歯にものがはさまったような遠回しな言い方はやめろ。言いたいことがあれば、はっきり言うがいい。 ★ 例題 ★ 1) もう僕には要らないもの(で/だから)、いくらでもほしい(だけ/ほど)持っ(てくる/ていく)がよい。 2) 僕の言葉がどうしても(信じられる→       )と言うなら、君自身の目( ) 確かめる( )いい。 (^^)前課の解答(^^) 1) 待ち(→文型285)/ついに(期待した結果)/てきた/ようだ 2) 教え/教え/てこない(~てくる→文型181)

#024 ~かい(が)あって/~かいもなく/~がい

024 ~かい(が)あって/~かいもなく/~がい 名詞: の       +  かい(が)あって 動詞:た形・ている形     かいもなく 動詞:[ます]形      +  がい ♪ 会話 ♪ 李 :今回のレコード即売会は出かけたかいがあったよ。念願のビートルズの古いアルバムが手に入ったからね。 良子:レコードだけが生きがいみたいねえ。 李 :会社で神経をすり減らしているんだ。寝ることと、レコード聴くことぐらいしか楽しみはないんだよ。 良子:何だか、寂しい人生ね。 ♯ 解説 ♭  「かい(甲斐)」は「効果・成果」や「意義・価値」という意味を表す名詞で、「~かい(が)あって」は例文1~3のように、動詞の「~した・~している」や名詞と結びつき、「~した効果・成果があって~した」という意味を表します。その否定表現は「~かいもなく」となります。どちらも文末が完了(「た」形)になることに注意しましょう。  例文4、5のように動詞の「ます形」と結びつくのは接尾語で「がい」と読み、「~する十分な意義・価値がある」の意味を表します。例として「やりがい・鍛えがい・育てがい・生き甲斐・作りがい・読みがい…」などがあります。 § 例文 § 1.厳しい練習に耐えたかいがあって、ついに長年の念願であった優勝を勝ち取った。 2.合格おめでとう。がんばったかいがあったね。 3.彼は手術のかいもなく、亡くなった。 4.やるからには、やりがいのある仕事がしたい。 5.彼のような選手は鍛えがいもあり、育てがいもある。 ★ 例題 ★ 1) (待つ/待ち)に待ったかいがあって、(ついに/結局)私にもチャンスが巡っ(てきた/ていった)(そうだ/ようだ)。 2) もっと(教える→   )がいのある学生に(教える→   )たいものだ。これではやる気も湧い(てくる→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) する(謙譲形)/折り/ておいて(基運「ておく」:→ P) 2) の/になり/の

023 ~折り(に)

023 ~折り(に) 名詞    :    の    +   折り(は) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> 折りに(は) ♪ 会話 ♪ 良子:先日、白石さんとお会いした折り、「また李君と一杯やりたいなあ」って言ってらしたわよ。 李 :そう言えば、卒業以来会ってないもんなあ。折りを見てこちらから連絡するよ。 良子:それがいいわ。学生時代はあんなに仲良しだったんだから。 ♯ 解説 ♭  「~折り(に)」は「~(の)とき」の意味で使われます。しかし、この「折り」は「機会」という語義も含んでいて、いくつかの慣用表現を持っています。   もし折りがあれば、またお会いしたいですね。→例題1)   私は折りにふれて詩を書きます。   折りも折り、うわさしていた彼が来た。  類似表現に同じ時を表す「~(の)際」「~(の)節」(→文型098)がありますから、各項を参照してください。 § 例文 § 1.上京の折りには、御一報ください。 2.この件は今度会った折りにでも、また相談しましょう。 3.駅前で交通事故があった折り、たまたま僕はそこに居合わせた。 4.暑さも厳しい折から、くれぐれも御自愛ください。 5.折りもあろうに、こんな真夜中に電話をかけてくるなんて、なんと非常識な奴だ。 ★ 例題 ★ 1) 最近、忙しくて先生とお会い(する/になる)(折り/際)がない。君からよろしく伝え(ていて/ておいて)くれ。 2) 訪中( )折りには色々お世話(になる→    )まして、誠にありがとうございました。日本にお越し( )節は、是非、御一報くださいませ。 (^^)前課の解答(^^) 1) として(→文型237)/までに(→文型402)/思いもした 2) か/ような/だった(副詞:「確か~だった/~した」の形)

#022 ~思いをする/~思いがする/~覚えがある

022 ~思いをする/~思いがする/~覚えがある 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  +  思いをする                      思いがする                      覚えがある ♪ 会話 ♪ 李 :部長の仕事に賭ける情熱には、頭が下がる思いがするよ。正に仕事の鬼だね。 山田:でも頭ごなしに怒鳴られて、嫌な思いをした者も少なくないよ。僕もその一人だがね。 李 :僕は今までに、一度もそんな覚えはないなあ。 山田:たぶん、部長の覚えがめでたいんだろ。 ♯ 解説 ♭  「~思いをする」は話者の感情・感覚を表します。この表現は「悔しい思いをする→悔しく思う」のように言い換えることもできます。「~思いがする」は自然にわき上がる感情・感覚を表しますが、もともと「~がする」(→文型031)は人間の五感を表す文型です。  なお、「~覚えがある」は 感情・感覚ではなく、「~記憶がある/~経験がある/~自信がある」などの意味を表します。→例題1) § 例文 § 1.湯上がりに冷たいビールを飲むと、生き返る思いがする。 2.日本に来たばかりの頃は、何度となく不愉快な思いや、恥ずかしい思いをしたものだ。 3.車の運転にかけては、いささか腕に覚えがあります。 4.僕は君のやり方を批判したけれど、君自身の人格まで誹謗中傷した覚えはない。 5.あれほど触るなと言っておいたのに、このパソコンをいじったのは君だね。身に覚えがあるだろ? ★ 例題 ★ 1) 私が歌手(にとって/として)一人立ちできる(までに/まで)は、ずいぶん辛い(思いもした/覚えもあった)。 2) 彼には確かどこ( )で会った(ようだ→     )覚えがあるんだけど、どこで(だ→    )っけ? (^^)前課の解答(^^) 1) 書き(→文型100)/漏らす(~損なう:→125P)/ように 2) 書き/ない(~ように:→445P)/注意し(〔ます〕形+なさい)

#021 ~落とす/~漏らす

021 ~落とす/~漏らす 動詞:[ます]形  +   落とす              漏らす ♪ 会話 ♪ 李 :大きな魚をとり逃したんだって? 山田:詰めが甘かったと言おうか、何と言おうか、契約までもう一歩のところまで行っていたんだが。あ~あ、土壇場で敵の大将を討ち漏らした武将の心境だよ。 李 :くよくよしてても仕方がないだろ。元気を出せよ。 山田:ああ、でも、逃げた魚は大きく見えるなあ。 ♯ 解説 ♭  「落とす」は「撃ち落とす・切り落とす・突き落とす…」など、「上から下へ落とす」のように原義に近いものや、「攻め落とす・泣き落とす・口説き落とす・競り落とす…」のように攻略して目的を達する意味の複合動詞も作ります。文法上大切なのはここで取り上げた「~するのを忘れてしまう」という意味を表す用法でしょう。この場合「~もらす」も同じように使えますが、「うっかり(不注意で)~し落とす」「注意していたのに~しもらす」と語感の違いがあります。  なお、「~損なう/~損ねる/~誤る」(→文型125)との意味の違いに注意しましょう。→例題1) § 例文 § 1.報告書は読み落としがないように、細部まで注意せよ。 2.君の意見は、問題の本質を見落としているよ。 3.入学願書に、大事な記載事項を書き漏らしてしまった。 4.そのことについては記憶がないんですが、聞き漏らしていたのかもしれません。 5.押して駄目なら引いてみな。それでも駄目なら、もう彼を口説き落とす手は、泣き落とし作戦しかないね。 ★ 例題 ★ 1) 四者択一の問題は、答えを(書く/書き)さえすれば、四分の一の可能性があるのだから、書き(損なわない/漏らさない)(ように/ことに)しなさい。 2) 試験場では受験番号の(書く→   )落としが(ある→   )よう、(注意する→      )なさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) この/恐れ/ないから(文末が意志表現の時、「ので・て」は不可) 2) 押さえ(→文型094)/込もう(→文型441)/悪化させる(使役)

020 *~恐れがある

020 *~恐れがある 名詞    :    の   +  恐れがある 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 良子:ねえねえ、今夜あたり関東地方に台風が上陸する恐れがあるそうよ。 李 :道理で雲行きが怪しいと思ったよ。早く帰って来て正解だったようだ。 良子:でも、ここらで一雨あった方がいいかもしれないわね。そうでないと、水不足の恐れもあることだし。 ♯ 解説 ♭  「~恐れがある」は「~(の)心配・不安・危険など<良くないこと>が起こる可能性がある」という意味で、否定は「~恐れはない」となります。「~かもしれない」と同じ意味です。しかし、「~かもしれない」はどのような場合にも使えますが、「~恐れがある」は悪い事態の発生の時にしか使えないという特徴があります。なお、この文型は「~兼ねない」(→文型043)とほぼ同義表現です。   台風が上陸するかもしれない。  →台風が上陸する恐れがある。  →台風が上陸し兼ねない。  間違えやすいのは悪い傾向を表す「~嫌いがある」(→文型063)との違いですが、「~嫌いがある」は既定事実で、未来の推測ではありません。→例題1) § 例文 § 1.この病気は伝染する恐れもあるから、気をつけてほしい。 2.地震の影響で津波の恐れがありますから、緊急に避難してください。 3.バーゲン品は安いが、品質が悪い恐れがある。 4.彼は口が軽いから、彼に話すと秘密が漏れる恐れもある。 5.この金融不安がこのまま続くと、最悪の場合、世界恐慌に発展する恐れがある。 ★ 例題 ★ 1) この船は(この/あの)程度の浸水で沈没する(恐れ/嫌い)は(ないから/なくて)、慌てなくてもよい。 2) 未成年者の犯罪を警察力だけで(押さえる→    )(込む→    )とすれば、かえって事態を(悪化する →       )恐れがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) になる/召し(お召しになる=着る)/になって 2) 入り/お/待ち

#019 *御~する/*御~になる

019 *御~する/*御~になる 御(お/ご)+  動詞:[ます]形  +  する/いたす                     になる/なさる 御(お/ご)+  動詞:[ます]形  +  ください                     願えませんか                     なさい ♪ 会話 ♪ 李 :部長、田中様がお見えになりました。こちらにお通しいたしましょうか。 部長:うん、そうしてくれたまえ。 田中:突然お伺いいたしまして、御迷惑ではなかったでしょうか? 部長:いえいえ、そんなことはございません。さあ、どうぞ。 ♯ 解説 ♭  「(お/ご)~する/いたす」を謙譲形、「御(お/ご)~になる/なさる」を尊敬形とも呼びます。敬語は場面や相手によって複雑に変化しますので、一言で説明することは困難ですが、私は下げる(=謙譲語)、相手は上げる(=尊敬語)と覚えておくといいでしょう。  「御」は「お」とも「ご」とも読みなす。 「お約束する・お料理する」や「ご案じになる・ご案じいたす」などの例外がありますが、一般に和語動詞には「お」、漢語動詞(「~する」動詞)には「ご」がつくと考えればいいでしょう。 § 例文 § 1.あのう、ちょっとお尋ねしますが、この近くに郵便局はないでしょうか。 2.申し訳ございませんが、もう少々、お待ち願えませんか。 3.私がご案内いたします。さあ、こちらへどうぞ。 4.では、ご主人がお帰りになられましたら、私の方にお電話くださるようお伝えいただけませんか。 5.当ホテルをご利用のお客様には、特別ディナー招待券を差し上げております。どうぞご利用ください。 ★ 例題 ★ 1) お買い上げ(する/になる)かどうかはともかく、一度お(召し/召し上がり)(して/になって)みてください。 2) どうぞ、お(入る→    )ください。( )(待つ →     )しておりました。 (^^)前課の解答(^^) 1) せいか(悪い結果)/に(変化の結果)/てしまいました(不本意) 2) で/で(理由)/と(「お気の毒です」が省略・感情発生→文型203)

#018 *~おかげで/*~おかげか/*~おかげだ

018 *~おかげで/*~おかげか/*~おかげだ 名詞    :    の      +  おかげで 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     おかげだ                      おかげか ♪ 会話 ♪ 母親:おかげさまで、息子も志望校に無事合格できました。本当に夢のようです。 先生:本人の努力のたまものですよ。本当によくがんばったと思います。 母親:いえいえ、先生のお力添えがなければ、とても・・・。全て先生のおかげです。 ♯ 解説 ♭  「~おかげで」は「~(の)援助・恩恵があって~」という意味を表す原因・理由の表現で、いい結果が生じたときに使われます。悪い結果が生じたとき使うのが「~せいで」(→文型122)、どちらの場合にも使えるのが「~ために」です。ただし、「~おかげで」は、例4のように皮肉・非難の気持ちを込めて使うことも希にあります。どれも「ので」系(→ 資料編、)なので、後件では発生した事実や確定事実を表し、「~つもりだ/~たい/~だろう」などの意志・希望・推量表現は使えません。  理由が不確かなとき、断定を避けて「~おかげか」の形が使われます。なお、「おかげさまで」という語は文頭でしか使えず、接続助詞の用法や文末で「~おかげさまです」とは使えません。   先生のおかげで(×おかげさまで)、無事合格できました。   合格できたのは、先生のおかげです(×おかげさまです)。 § 例文 § 1.君が手伝ってくれたおかげで、仕事が早く片づいた。 2.私が今日あるのは、田中さんがあのとき助けてくださったおかげです。御恩は一生忘れません。 3.お前が一人前になれたのは、一体、誰のおかげだと思っているんだ。 4.あなたのおかげで、平気で嘘がつける女になれたわ。 5.先生の丁寧な教え方のおかげか、このクラスには落ちこぼれの学生は一人もいません。 ★ 例題 ★ 1) 一人っ子の(おかげか/せいか)、わがまま(が/に)育っ(てしまいました/ていました)。 2) おかげさま( )主人は軽い骨折で済んだのですが、あの事故( )亡くなられた皆様のことを思う( )・・・。 (^^)前課の解答(^^) 1) 得る/てみた(→文型197)/絶たれた(基運「受身」:→ P) 2) に/納得し/

#017 *~得る/*~得ない

017 *~得る/*~得ない 動詞:[ます]形  + 得る             得ない ♪ 会話 ♪ 百恵:ねえねえ、山田さんが昨夜UFOを見たって言ってたわよ。 李 :あり得ないよ。でも、嘘を付く男じゃないから、あいつの目の錯覚だろう。 百恵:まるっきしロマンがないんだから。この広い宇宙のどこかに宇宙人がいることだってあり得るわよ。 ♯ 解説 ♭  「~得る/~得ない」は可能表現の一種で、一般動詞につくときは可能形「~られる/~ られない」と意味はあまり変わりません。しかし、「話し得る」は状況から判断して「~話せる可能性がある」が本来の意味なので、単に能力を言うだけの「彼は英語が話せる」を「彼は英語が話し得る」とは言えません。  また、「~得る/~得ない」は可能形が作れない「ある・できる」などの状態動詞や無意志性の自動詞について、「あり得る/あり得ない」「起こり得る/起こり得ない」のように「~する可能性がある/ない」ことを表します。   あり得る(=存在する可能性がある/×あれる)   できうる(=できる可能性がある/×できれる) § 例文 § 1.人類が火星に移住するってことは、近い将来、起こり得ることだ。 2.私ができ得る限りのことは、喜んでいたしましょう。 3.これが今選択し得る最良の方法ではないでしょうか。 4.申し訳ないが、まだ公表し得る段階ではないので、あしからず。 5.彼ほどの財力があれば、なし得ないものはないと言っていいだろう。 ★ 例題 ★ 1) 考え(得る/兼ねる)限りの手は尽くし(ておいた/てみた)が、もはや倒産を免れる道は(絶った/絶たれた)。 2) あなたの主張は支離滅裂で、私( )は到底(納得す る→   )(得る→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) している/に/うっかり(不注意は「うっかり」) 2) いたし(→文型044)/の/に(「うちに」と「うちは」の違いに注意)